ある在中国日本語教師の日記

日本に居場所があんまりない在中国日本語教師日記です。

求められているところで働くのが一番

 

給料がたくさんもらえる仕事に就けば幸せか。
やりがいのある仕事ができれば幸せか。
人間関係に恵まれた職場で働ければ幸せか。
幸せのかたちは人それぞれだと思うので、自分で決めるしかないですね。

 

若い頃は、どんな生き方が自分の幸せか自分でもわからなかったので、世間に出回っている意見や情報を見て、なんとなく「条件」のよさそうな仕事や会社を選ぼうとしていました。
自分の中に確固とした「幸せのかたち」がなくて、情報に振り回されていたんだなと思います。
結構長いこと振り回されてきましたが、四十過ぎてからようやく「かたち」が見えてきました。

 

自分がそこで求められていること。
そこに楽しさ・やりがいを見出せること。
自分の能力で無理なくできること。
私の場合は、こういう環境であれば、給料が安くてもそれなりに幸せに生きていける気がします。

 

以前、国内日本語学校は4校ほど面接・模擬授業に進み、全て落ちたという話をしました。
それでよかったと思っています。
自分が国内の日本語学校で求められる人材ではなかった、ということ。
もし何かの間違いでたまたまどこかの日本語学校に採用されていたら、すんごい苦労してた気がします。

実は、それ以外にも一校だけ採用された学校がありました。
そこは普通の日本語学校ではなく、中国人経営で生徒も全て中国人という学校でした。
教師はその経営者の校長を含めて4人、雑居ビルの一室でやっていたので、学校というよりも塾のような感じです。
教え方も、中国人教師が文法を教え、日本人教師が会話を担当するという、中国の大学や日本語学校と似たようなシステムでした。

その学校は一ヶ月でやめました。
常勤なので週六日以上働き、試用期間三ヶ月は月給16万円(4ヶ月目からは18万円らしい)。
私が働いた5月は、休みは結局三日だけだったので月28日出勤しました。
普段おとなしい私の生涯で、一番日本語を喋った月だと思います(笑)。
辞めたのは、忙しいからとか給料が安いから、というだけではありません。
この業界で仕事をする以上、覚悟はしています。

なんというか、その学校での「居場所のなさ」に耐えられませんでした。
常勤スタッフは校長(中国人)、若い男性教師(中国人)、若い女性教師(日本人)、私(日本人)の4人だけ。
授業がない時は、猫の額みたいな狭い事務室で若い女性教師と向かい合って座ります。

この時間が長いの何の。
仕事以外の会話は一切なし。プライベートなことを話しかけられるような雰囲気はありません。
その若い女性教師も、得体の知れない中年男と向かい合ってやりづらかったと思います。
職場での働きやすさって、ある程度お互いの「人となり」が分かっていることが必要だと思うんですよ。
仕事に直接関係ない話であっても、仕事をしやすくするために雰囲気を和らげる「無駄口」って必要だと思うんですね。

ただ相手は若い女性なので、中年男が無理やり共通の話題を見つけて共感的な話をふってもサムいことになるのは目に見えているし、そもそも「無駄に話しかけるな」オーラが凄かった。
若い女性だけど職場では上司的な立場の人だし、変に打ち解けようとすると警戒されかねないし、どういうスタンスで接すればいいのか難しかったですね。
その女性は校長の信頼が厚くて採用権を持ってたようなので、なんで私を採用したのかが不思議ですが。
よほど忙しくて、来てくれるなら誰でもよかったのかもしれません。

私も決して性格が明るい方ではありませんが、知らない人ともある程度打ち解けてリラックスして仕事したい方なので、無駄口きいちゃいけない雰囲気は辛かったです。
その女性も決して無口なわけではなく、他のスタッフとは明るく話していたりしました。
つまり、4人の中で私だけが浮いていて、この場所で「歓迎されてない」空気に次第に耐えられなくなってきました。
狭い職場で毎日顔をあわせているのに、こちらの人間性に全く興味をもたれないという疎外感。
とにかく、その女性も含むスタッフと人間的な交流は一切発生しませんでした。

授業をやっている時だけはほっとできました。
授業中も時々脱線して、学生たちの笑いをとるのが好きでした。
中級の授業で、「あなたが一番楽しいのはどんな時ですか」と質問した時、学生から「先生の授業を聞いているときです」と、教師冥利に尽きることも言われました。

授業は好きだったので続けるかどうするか迷いましたが、中国人校長に「発音指導ができない」ことを厳しく叱責されたのをきっかけに辞めることにしました。
そもそも授業に発音指導など求められていなかったので、不思議でしたが(一人一人発音指導する時間なんかありません)。
校長も、「こいつが職場にいても雰囲気が重くなる」と薄々感じて、辞めさせる理由を探していたのかもしれません。

こういう場でも、すぐに打ち解けられるキャラの人もいるのでしょうね。
でも私は、この場所に来るべき人間ではなかったのでしょう。
そのまま続けていたとしても、早晩何らかの悶着が発生してロクなことにならなかっただろうなとは想像できます。

 

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