国内の日本語学校と中国の大学の教え方の違い
日本国内の日本語学校と中国の大学の、教え方の違いについて多少述べたいと思います。
中国以外の国や、中国の日本語学校などについてはわかりません。
日本の一般的な日本語学校=クラスが多国籍で教師(当然日本人)が文法も含む全てを教える。直接法。
中国の大学の日本語科=クラスは中国人だけ。文法は中国人教師が教え、日本人は会話や作文を担当。日本人教師は直接法。
国内の日本語学校で教える場合何が大変って、日本語が不自由な学生に日本語だけで日本語文法を教えるというハードルが課されること。
学生からの文法に関する質問にも答えなければなりません。
その辺りの教え方は日本語教師養成講座でも学びますが、これが上手にできるかどうかが、国内日本語学校で勤まるかどうかの基準なのかなと思います。
海外での日本語教師経験はキャリアとして認めない日本語学校があるのは、このあたりの事情によるものでしょう。
一方、中国の大学で日本人教師が担当するのは主に会話と作文、それに社会科系の科目です(日本国家概況、日本文化、日本社会、日本の歴史、日本文学など)。
中国の大学は採用されやすいという話を昨日しましたが、応募条件が「大卒」だけ、という大学も多いです。
日本語教師養成講座修了や日本語教育資格検定合格という条件があればより採用されやすくなると思いますが、必須ではありません。
昨今の日中関係及び日本での中国報道を考えると、中国に行きたがる日本人はあまりいないので、「来てくれるなら贅沢は言っていられない」ということなのでしょう。
つまり、日本語教育に全く携わったことがなく、そもそも日本語教育に興味もないようなズブの素人でも、大卒であれば、どこかしらに採用される可能性が結構あるということです。
このことの弊害は後日書きます。
自分のことを棚に上げて書きますが、国内の日本語学校には(一般企業にも)到底採用されないような「日本人教師」、中国に結構いると思います。
素人であっても、やる気があって研究熱心で教えることが好きな人ならそれなりに勤まると思うのですが、そうではない方もチラホラいるようです。
脱線したので戻します。
中国の大学では、日本人が文法を教える必要がないから楽だなあと思われるかもしれません。
国内学校の初級クラスで使うような、しちめんどくさいピクチャーカードやフラッシュカード、レアリアなどを自分で制作、用意する必要がないので楽といえば楽です。
ただ、この仕事は手を抜こうと思えばいくらでも抜けますが、学生が満足するような授業を提供しようと思えば、いくらでも準備すべきことはあります。
作文の授業では、二回に一回は作文を書かせ添削します。
今、2年生の作文を担当していますが2クラスで計75人いるので、75人分の作文を一枚一枚読んで添削し、間違った文例をワードに打ち込んで次の授業でシェアしながら解説します。
あと、「日本国家概況」「日本文化」などの社会科系科目を担当することも多いです。
「大卒日本人ならこれくらいのことは知っているだろう」という前提なのかもしれませんが、高校時代に勉強したことなんてあらかた忘れています。
私は元々社会科系はわりと好きですが、インターネットや本を調べてパワーポイントに要点をまとめるなど、準備にはたっぷり時間がかかります。
国内日本語学校で、進学に力を入れているところ以外は社会科の授業を担当することはあまりないのではないでしょうか。
それ以外にも、「論文」授業担当などという無茶振りをされたことがあります。
自分で論文を書いたこともない日本人に(私の卒業学部には卒論はなかった)論文を教えさせるというのも、かなり無茶やってますね中国の大学。
(授業は悲惨なことになりました)
別の日本語教師のブログを読むと、「秘書講座」みたいな科目を担当させられた人もいるようです。
とまれ、中国の大学では文法を教える必要がない点は楽ですが、社会科系科目を幅広く教えられることが前提になってるので社会科に興味がない人はつらいかも知れません。
担当授業をムチャ振りされる可能性もあります。
なぜ中国で日本語教師?
日本で就職できないからです。
今まで零細印刷会社、ブラック制作会社、やくざな社団法人、零細出版社などで編集や制作の仕事をしてきました。
現在の職務経歴と年齢では、すでに日本でまともな会社に採用される見込みは限りなく低いでしょう。
というか、採用されたとしても日本であまり働きたくないです。
日本で働くのは向いてない。
トロい私ですが、40代半ばになってようやくそのことに気づきました。
現在は広東省のとある町の大学で教師をしています。
中国での教師歴は通算4年目、今の大学は2校目です。
楽しいです。
あまり「働いている」という感覚がありません。
学生と一緒に遊んでいるとまでは言いませんが、これで給料もらえるのか、という感じです。
職業柄日常的に接するのは学生なので、嫌な上司、先輩、取引先なんてのも無縁です。
日本で働いている時は、朝起きるたびに「仕事に行きたくない」と感じていましたが、今そんなことを感じることはありません。
なぜ中国なのか
日本で420時間の日本語教師養成講座に半年通い、国内の日本語学校に就職するべく活動しましたが、普通の学校にはどこにも引っかかりませんでした。
2年前、10校位に履歴書を送り、4校で面接・模擬授業をやって不採用になったところで心が折れました。
(その後、中国人相手の特殊な日本語学校に採用されるも一ヶ月で退職)
日本語教師需要は数年前から急増しているので、決して難関というわけではありません。
同じ養成講座のクラスメートはみんな日本語学校に就職しました。
不採用の理由は、ここには書きませんが自分でもだいたいわかります。
中国の大学の場合、インターネットの求人サイトを見て紹介会社とメールでやり取りし、書類を提出して、大学の担当者と電話で5分くらい喋っただけ。
拍子抜けするくらい簡単です。
こんな簡単に採用していいのか、と思うくらい。
(実際、あまりにも採用が簡単であるがゆえの弊害を感じております)
給与はといえば、日本国内の学校とあまり変わりません。
貨幣価値が違う中国と日本の日本語教師の給料が為替換算で大体同じということです。
これは広東省という、中国でも物価の高い地域だからかもしれません。
先日も国内の日本語学校で働いていた知人から、月から金曜日までフルに授業を入れて月収13万なんて話を聞きました。
そこから家賃や光熱費や諸々の生活費を払うと赤字だそうです。
私が今働いている大学の給与は為替換算で大体同じくらいですが(授業は週3日12コマ)、住居は無料提供で生活費は食事が月1~2万程度です。
国内の日本語学校に運良く(運悪く?)採用されていたら、今頃、癖のある同僚の先生方とのグループティーチングに神経を使いながら、スズメの涙みたいな給料でひーひー言ってたのかなあと思うと不思議な感じがします。